社外向け資料作成者のための写真・画像利用で著作権侵害といわれないためのポイント




写真・画像の勝手な使用で炎上しないための基礎知識

広告やチラシだけでなく様々なSNSで自社情報を社外に向けて発信する機会が増えています。
でも、すべての発信情報に使用する画像や写真を自社のコンテンツだけで賄うわけにもいきません。
外部の画像・写真を利用する際の注意点についてご紹介します。


著作権とは何か?

◎著作権を理解するのはなぜ大切なのか?
他人の写真や画像を利用する際には、著作権の定義や種類、著作物の条件を理解することが重要になります。
例えば、社内で使う資料やマニュアル、社外に発信する広告やウェブサイト、取引先から提供されるデータや画像などは、ほとんどが著作物です。

このような著作物は「著作権」という権利で保護されています。

これらの著作物を無断で使用したり、流用したりすると、著作権侵害になる可能性があります。
著作権侵害は、民事上の損害賠償や差止めの対象になるだけでなく、刑事上の罰則もあるからです。
 

◎著作物とは?
著作物とは、思想や感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術、音楽、舞踊などの分野に属するものです。
 
著作物になるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
 


(1)創作性:既存のものの単なる模倣や真似ではなく、作者の独自性や個性が反映されたものであること。
(2)表現性:思想や感情を言語や音符などの形で具体的に表現したものであること。
ただし、表現形式は自由であり、紙やデジタルなどの媒体は問われません。
(3)公表性:公表されているかどうかは関係なく、著作物として認められます。
ただし、公表されていない場合は、証拠が必要になることがあります。
このような条件を満たす画像や写真は著作物として著作権によって保護されることになります。
 
 

◎著作物の種類(具体例)
 
・写真:同じ被写体でも撮る人によって撮り方が異なり創作性があります
・画像:創作者の個性が出ます
・音楽、小説、美術作品
・プログラム(の言語):汎用的なところ以外のモジュールに創作性があります
 

◎著作権とは?
著作権とは、創作物に対して作者が持つ権利のことです。
 

著作権には、著作物を公表したり、複製したり、改変したりするときに関連する「著作財産権」と、作者の名前や肖像を表示したり、著作物の内容や形態を変えられないようにするときに関連する「著作人格権」とがあります。
 
著作財産権は、権利の存続期間が定められており、譲渡や相続が可能です。
著作人格権は、期間が無制限であり、譲渡や相続ができません。
 

写真や画像の著作権に関する基本的ルール

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では、著作権に関する基本的なルールについて説明します。

◎著作権者の許諾を得る
他人が作成した写真や画像は著作物として著作権で保護されています。
そのため、このような写真や画像を利用する場合は、原則として、その著作権者の許諾が必要です。許諾を得る方法は、直接連絡する場合や、ライセンス契約を結ぶ場合などがあります。
許諾を得る際には、利用目的や範囲、期間、報酬などを明確にすることが重要です。 
 

◎許諾を得なくても、引用の条件を満たせば使用できる場合がある
「引用」の条件を満たした利用は許諾が不要な場合があります。
引用とは、自分の創作物に他人の写真や画像を一部取り入れることであり、以下の5つの条件を満たす必要があります。
 


(1)引用する写真や画像が公表されていること:勝手に公表してしまうことは著作者人格権の侵害になります。
(2)引用する写真や画像が公正な範囲内であること:引用する写真や画像が全体の2~3割程度を目標にすることが好ましいです。
(3)引用する写真や画像が自分の創作物に必要であること:引用する必要性があることが重要になります。
(4)引用する写真や画像の出典元を明記すること:第三者が出典元に当たれるように情報を記載します。
(5)引用する写真や画像の内容や形態を変更しないこと:勝手に変更することは著作者人格権の侵害になります。
 

ネット上の写真や画像を利用する際の具体的な注意点


上述したルールに則った利用ができればいいのですが、プレゼンなどで写真や画像をふんだんに利用したい場合もあるでしょう。
このような場合には、商用利用可能な画像を使うことが望ましいです。
 
商用利用可能な画像とは、著作権者から事前に商用利用に関する許諾を得た画像や、クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスなどで商用利用が許可された画像などです。
いきなり画像検索するのではなく、例えば、「商用利用可 画像」などと入力して検索して表示された画像提供サイトの画像は、利用条件の範囲内で商用利用が可能です。
 

◎クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスとは?
クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスは、インターネット上での作品の流通や共有を促進することを目的としたもので著作権のある著作物の配布を許可するパブリック・ライセンスの一つです。

著作者は自分の作品を他者に共有、使用、二次創作の権利を付与することができます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスには、さまざまなレベルのライセンスがあり、それぞれに以下のような条件があります。


・表示(BY):著作者の名前を表示すること
・非営利(NC):営利目的での利用を禁止すること
・継承(SA):同じライセンスで再配布すること
・改変禁止(ND):原著作物のままで利用すること
 
これらの条件を組み合わせてできるクリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、全部で6種類あります。
 
例えば、表示-非営利-継承(BY-NC-SA)というライセンスは、著作者の名前を表示し、営利目的でなく、同じライセンスで再配布することを条件にしています。
でも、インターネット上にある画像は、必ずしも商用利用可能なものばかりではないので、使用許諾の内容に注意することが必要です。
 
どうしても許諾が得られなかったり引用の条件を満たせなかったり等、ルールを守れないような場合には画像利用はできませんが、例えば、youtubeのような動画の一部を貼り付けたい場合、画像そのものではなくリンク先を表示する等、画像を直接表示させない工夫をしましょう。

著作権侵害をしてしまった場合の罰則


著作権を実際に侵害してしまったとしても、悪意がなければ侵害したという認識はないはずです。
でも、著作権侵害の怖いところは、故意だけでなく間違って侵害した場合でも罰則があることです。
この場合、使用を禁じられるだけでなく、損害が発生した場合には損害賠償請求されることがあります。
 

刑事罰もあり、どんな侵害をしたかによって罰金額や刑期がことなりますが、場合によっては十年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金が命じられます。
 

自社の写真や画像を勝手に利用されないようにするための注意点



一方、自分の写真や画像を勝手に使用されないためには、著作権を主張しましょう。
 
自社で撮影した写真や作成した画像などの著作物は、日本では創作した時点で自動的に著作権が発生します。
でも、写真や画像が著作権で保護されていることがわからない方もいます。
そのような方に対しては、写真や画像に著作権表示をすることで、他人に無断で使用されることを防ぐことができます。

著作権表示とは、著作権者や著作物の発行年などを示す表示です。
 
例えば、2023 © Taro Yamadaというように、創作した年、©、著作権者を記載します。
著作権表示は、著作権を主張するための有効な手段ですが、必ずしも必要ではありません。
ただし、著作権があることを主張することによって著作権を侵害するような他人の勝手な使用を抑制することができます。

もし、自分の写真や画像が無断で使用されていることに気づいた場合は、プロバイダやサイト管理者に削除依頼をしたり、損害賠償や差し止めなどの法的措置を取ったりすることができます。

 

弁理士が答える著作権Q&A

知的財産基礎講座

◎自分で撮影した写真をWEBで公開する場合の注意点はありますか?
被写体が公表されていない場合には公開できません。
また、著作権ではないですが、他人の肖像権やプライバシーの侵害に注意しましょう。
顔が映らないような配慮が必要です。
 

◎ポスターなどの著作物が自分で撮った写真に写りこんでしまった場合は、著作権侵害になりますか?
たまたま写りこんだ場合には著作権侵害にはなりません。

 
◎画像生成AIで作成したイラストの著作権は誰のものですか?
現状では著作権は発生しないことになりますが、ホットな議論がされているところなので、将来的には著作権が発生する場合もあるかもしれません。
 

◎誰が創作したかわからない写真や画像を利用する場合の注意点はありますか?
誰が創作したかわからない写真や画像は誰が著作権を持っているのかわかりません。
このような場合は使用を控えることをお勧めします。
 
◎写真や画像を少し変えれば著作権侵害といわれないようにできますか?
著作物を勝手に変えることも著作権侵害になります。利用する場合にはそのまま利用するようにしましょう。
 

まとめ:著作物の安全な利用のために

著作権について他人から文句を言われないよう他人の著作物を利用するときには、許諾を得ずに著作物を自由に使える場合や許諾を得る必要がある場合の判断基準を把握したうえで使用するよう心がけましょう。
 

▼参考文献

クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンス:
https://creativecommons.jp/licenses/

著作権が自由に使える場合:
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

 

▼著者紹介
明立特許事務所 所長:深澤 潔(ふかさわ きよし)
知的財産コンサルタント・弁理士として、著作権だけでなく特許や商標といった企業の知的財産に関する人材育成やマネジメントのお悩みに関する相談をお受けし、コンサルティング・企業研修活動をしております。
ご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。
自社の強みを生かし他社との差別化を図るための工夫を一緒に探します。

このコーナーでは、専門家によるコラムをお届けしています。

講師からのメッセージ

KIYOSHI FUKASAWA深澤 潔

                           

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