withコロナ時代の人材育成計画のポイント

withコロナ時代の人材育成計画のポイント



2020年度→2021年度をどうとらえるか

2020年新型コロナウィルスで、私たちの社会は大きく変わりました。
当たり前と思っていたことが揺らぎ、企業活動も大きな影響を受け、働き方の見直しが行われています。
政府からのトップダウンで進んでいた感のある働き方改革が、企業や個人のニーズをドライブとして、ボトムアップの取組になることでしょう。

withコロナ時代の人材育成計画はどのように作ればよいのでしょうか。


withコロナで変わった働き方

withコロナで変わった働き方で最も大きなトピックスは、テレワークの拡大でしょう。
リクルートワークス研究所の調査結果では、2017年12月にテレワークを行った正社員(20~50歳)は9%でした。

コロナを挟んで、パーソル総合研究所が2020年4月に全国の20~59歳の正社員を対象に調査したところ、テレワーク実施率の全国平均は約28%と一気に伸びました。

では今後、テレワークはどれくらい増えるのでしょうか。

みずほ総合研究所の「在宅勤務はどこまで進むか」という調査結果では、正社員の3~4割、非正規社員の2割、全体で3割の社員が在宅勤務をしたと試算しており、パーソル総合研究所の結果と一致しています。
同調査では、仕事のやり方の見直しやIT環境の整備により、さらに10ポイント程度の上乗せは可能とし、全体の4割程度まではテレワークは拡大するものと予測しています。
 
withコロナで変わった働き方

withコロナ時代に対応した人材育成計画とは

パーソル総合研究所の「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」では、「今後、日本企業はテレワーカーと出社者が混在する『まだらテレワーク』におけるマネジメント課題を抱えることになる」と指摘しています。

ここでいうマネジメント課題とは、働き方の変革に伴い現出した経営上の課題です。
そのうち、人材育成計画で扱う主な課題は以下の2つです。


① 新設・変更された制度を正しく運用できるよう、従業員のマインドやスキルを変える。
② 働き方が変わることへの従業員の不安を解消する。


2021年度の人材育成計画は、withコロナで変化した環境に適応するために、顕在化した自社の課題を解決することが主眼になります。
しかしそれだけでは、変化の先の成長は望めません。
喫緊課題の解決だけでなく、afterコロナではどんな人材が必要なのかを具体化し、着手することも必要です。
したがって人材育成計画にも、


③ afterコロナを見据えた人材育成に着手する。


を、ぜひ盛り込みましょう。

withコロナの人材育成計画はこうつくる

前項でのべたように、計画に盛り込むべき内容は、以下の3点です。
①  新設・変更された制度を正しく運用できるよう、従業員のマインドやスキルを変える。
②  働き方が変わることへの従業員の不安を解消する。
③  afterコロナを見据えた人材育成に着手する。

新設・変更された制度を正しく運用できるよう、従業員のマインドやスキルを変える

テレワークを実施している企業が、評価制度をメンバーシップ型からジョブ型に変更する場合の例の教育ニーズは、次のようなことが考えられます。


① 制度改定によって実現したい戦略や風土、マインドセット、行動を現実化する。
② 社員がジョブ型に移行する目的、新しい制度を理解して、自分の目標設定ができる。
③ 管理職が評価基準に照らして部下の成果を評価できる。
④ 管理職が、テレワークをしている部下の仕事の進捗やプロセスを把握するためのコミュニケーションをとれる。
⑤ ローパフォーマーの従業員へ再教育を実施する。 
       


これらのニーズを最適な手段と組み合わせて、実施計画を作成します。
手段は集合教育だけではありません。
業務マニュアルの作成、行動規範の策定、業務の様々な場面をとらえた機会教育、ITの活用など、柔軟な発想で手段をみつけます。

ここでは評価制度を例に取り上げました。
実施した制度改革すべてについて、同様の作業で教育ニーズを把握し、それを解決する手段を定義して、人材育成計画に盛り込みます。

すべての制度改革に一年で対応するのは難しいので、優先順位を決めて年度計画に落としこみましょう。

働き方が変わることへの従業員の不安を解消する

従業員はどんな不安をもっているか。
従業員はどんな不安をもっているか。

パーソル総合研究所「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、「テレワークの不安・課題」の5月時点の上位5項目は、

1位 非対面のやりとりは相手の気持ちがわかりにくく不安(32.2%)
2位 上司から公平・公正に評価してもらえるか不安(31.4%)
3位 上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安(30.2%)
4位 出社する同僚の業務負担が増えていないか不安(25.6%)
5位 出社・出勤する同僚が不公平感を感じていないか不安(24.0%)

となっています。

これを分類すると、

1位 全般的なコミュニケーション不足への不安
2位 評価基準への不安、上司が自分の仕事を見てくれているか不安
3位 上司が自分の仕事を見てくれているか不安
4位 業務分担への不安、同僚とのコミュニケーション不足への不安
5位 同僚とのコミュニケーション不足への不安

と考えられます。
5項目中3項目に「コミュニケーションの不足への不安」が入っています。

コミュニケーションの不安を解決する

見落としてはいけないことは、この不安はテレワークの拡大によって起きた新しい不安であることです。
いままでの従業員のコミュニケーションの取り方のルールや約束事では、新しい勤務体制に対応できなくなったことが予測できます。

であるならば、まずは新しいルール、約束事を作り、それを実践するための教育ニーズを把握するという手順で考えます。

例えば、「上司と部下の1on1面談を月2回、1回30分で実施する」ことになったとします。
上司への教育ニーズは、

① 対面と非対面のコミュニケーションの違いについて説明できる。
② 相手のバーバル・ノンバーバルのコミュニケーション表現を指摘できて、その意味を推測できる。
③ 1on1面談と従来の目標設定面談・評価面談との違いを説明できる。
④ 部下の話を最低10分間傾聴できる。
⑤ アサーティブなフィードバックができる。

等があげられます。
これらを解決するための企画を、人材育成計画に盛り込みます。

afterコロナを見据えた人材育成に着手する

afterコロナを見据えた人材育成に着手する
afterコロナ時代に必要なのは自律型人材
新型コロナウィルス禍は企業に一度活動をストップして、新たな体制をつくることを要求しました。
同時に個人に対しても生き方・働き方の見直しを迫っているのです。
企業も個人も大きな転機を迎えているこのタイミングこそ、取り組みたいテーマがあります。
「自律型人材の育成」です。
自律型人材とは「自分で考えて、決めて、行動する」人のことです。


withコロナからafterコロナの時代に向けて、企業には自分で考えて決めて行動する自律型人材が求められていますし、個人も自分で考えて決めて行動できなければ、どんどん取り残されてしまいます。

「自律型人材の育成」という言葉にはすでに手垢がついていると感じる方も、多いでしょう。
それくらい「自律型人材の育成」は、ここ何年も企業の人材育成の課題をされてきました。
ということは、実現している企業は少ないということではないでしょうか。

なぜ「自律型人材の育成」は進まないのか。
それは、「自律型」人材を「育成する」ことのパラドックスにあるのではないかと思います。

自律型人材は育成できるのか

企業が人を育てることの目的は、社員の可能性を最大限に引き出して、業績向上にむすびつけることです。
そのためには、社員が望ましい行動をとれるように変わってもらわなければなりません。
これが「学習」の成果です。

そのために企業ができることは2点です。

① 企業と個人をとりまく環境変化について、情報を提供すること。
② 仕事を社員の成長のための機会として提供すること。


自律型人材の育成での①は、キャリア開発研修として提供されることが多いでしょう。
②は会社からの一方通行でない業務のアサインができることが必要です。
従業員の得意なことを活かす、希望をとりいれた配置ができるような制度を作れるかどうかです。
従業員と会社との対話を続けながら①と②を結び付けて実行することが、自律型人材育成につながります。

withコロナ時代の人材育成計画作成時の注意点

withコロナ時代の人材育成計画作成時の注意点

「リアル研修ありき」の発想にならない

今春、多くの企業で新人教育がオンライン研修、在宅研修で行われました。
教育担当者からは、「リアル研修と比べてオンライン研修では交流機会が減るので、絆が生まれにくい」といった意見がでました。
本当にそうでしょうか。
教育担当者に、「本来、リアル研修があるべき姿で、オンライン研修は一時の回避策にすぎない」とする考えがないでしょうか。

新人社員世代と私たち世代では、ネットリテラシーが違います。
コミュニケーション手段の好悪も違うでしょう。
リアル研修を知らないでオンライン研修から入れば、彼らなりにコミュニケーションの取り方、関係の作り方を創出する可能性もあります。
オンライン研修を新しい教育手法として、最大効果をだせるカリキュラム設計、インストラクション技法、教材設計などを作り上げていきましょう。

PDCAサイクルを短い期間でまわす

変化の激しい時代には、100満点の企画を追求するのではなく、50点でもいいからとにかく必要な企画を実施することです。
教育担当者だけで完成品を作ろうとせず、現場や自社のエンドユーザーに近い関係者を巻き込み、必要な要素を盛り込んでいきます。
それにより修正も柔軟に加えられ、結果的にイメージに近い企画を作れるでしょう。
PDCAサイクルを短い期間でまわす

まとめ

人材育成計画は、自社の事業計画達成を人の面から支えるものです。
今こそ、この原点に帰りましょう。
withコロナ、afterコロナの時代に、事業計画とリンクしない人材育成計画をやっている暇はありません。

コロナ対応の人材育成課題は、

①制度の変更や新設に伴い、それを運用する人の問題を解決する
②働き方が変わることへの従業員の不安を解消する
③afterコロナを見据えた人材育成に着手する

の3点です。
会社がやろうとしていることをしっかり理解して、行動表現の教育ニーズに落とし込みます。

実行段階では今までの経験にとらわれずゼロベースで発想し、現場を巻き込んでPDCAサイクルを回しながら、企画をたて実施します。

またafterコロナ時代をにらんで自律型人材=自分で考えて、決めて、行動する人材の育成にも着手しましょう。

変革期こそ従業員に最大限に力を発揮してもらうことが、必要です。
そのための人材育成計画作成に、経営者や現場も巻き込んで、いますぐとりかかりましょう。

このコーナーでは、専門家によるコラムをお届けしています。

講師からのメッセージ

ATSUKO HIRAI平井 厚子

                           

人生100年時代を迎え、これからの人材育成は「学習」がキーワードになります。
「社員SO!学習」をデザインするキャリアコンサルタントとして、「 総:みんなが、誰もが、相:相手を尊重し、双:インタラクティブに、想:自由な発想で、創:学びを創り出す」ことを支援していきます。

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